なぜオンライン講座は失敗する?その原因と解決策を成功事例で解説します

この記事の概要:SNSのフォロワーを増やせば生徒も増える。そう考えて発信を続けても、申し込みにつながらないのはなぜでしょうか。ストアカ、YouTube、noteでオンライン講座が軌道に乗らない理由と、生徒が積み上がる仕組みの作り方を、実際の講師の事例をもとに解説します。


すでに教える仕事をされている方が、そのレッスンや講座をオンラインでも提供しようとしたとき、思っていたよりずっと難しいと感じる場面が出てきます。

動画を撮ってみた。SNSで発信も始めた。スキルマーケットにも登録してみた。それでも生徒は思うように増えない。増えたと思っても、いつの間にか離れていく。

弊社ではこれまで、海外のSaaS・ITツールを実際に契約して使い込みながら、国内の事業者にとって役立つかどうかを検証してきました。この記事は、その検証に加えて、実際にオンライン講座を運営している講師の事例をもとにまとめています。ピアノ講師、ギター講師、そしてビジネスパーソン向けにAI活用を教えている方。教える分野はまったく違うのに、詰まっているポイントはほぼ同じでした。

この記事では、その共通する詰まりどころを整理したうえで、どこに手を打てば状況が変わるのかをお伝えします。

なお、この記事は「すでに講師業をしている方」に向けて書いています。教える内容があり、少なくとも数人の生徒か、話を聞いてくれる人がいる状態を前提としています。これから講師業を始めたいという段階の方には、そのままは当てはまらない部分がありますので、あらかじめご了承ください。


目次

そもそも、なぜオンラインでやりたいのか。動機は1つではない

オンライン化と聞くと、多くの人が「新規の生徒を増やすための施策」だと考えます。しかし、実際に講師をしている方々の動機は、もう少し幅があります。ここを分けて考えておくと、この先の判断がしやすくなります。

新しい生徒を、地域の外から獲得したい

1つ目は、素直に新規開拓を目的とするケースです。

対面のレッスンは、通える範囲にいる人しか生徒になれません。教室の周辺に住んでいるか、通勤経路上にあるか。その条件を満たす人の数には限りがあります。専門性が高い分野であればあるほど、その地域内で「教わりたい」と考える人の絶対数は少なくなります。

オンラインであれば、その地理的な制約がなくなります。全国、場合によっては海外に住む日本語話者まで対象になります。ニッチな分野を教えている人ほど、この効果は大きくなります。

引っ越していく生徒との関係を、切らしたくない

2つ目は、あまり語られませんが、現場ではかなり切実な動機です。

長く教えてきた生徒が、進学や転勤、家庭の事情で引っ越していく。対面では続けられなくなるけれど、本人は続けたいと言っている。こちらも教え続けたい。そういう場面です。

あるピアノ講師の方も、まさにこの理由からオンライン化を検討し始めていました。この場合のオンライン化は、攻めの施策ではありません。すでにある関係を守るための手段です。

この2つは、動機が違えば求めるものも変わります。新規開拓であれば集客の導線が要ります。継続維持であれば、既存の生徒がそのまま移行できる受け皿が要ります。そして後で触れますが、世の中にあるプラットフォームの多くは、このどちらか一方にしか対応していません。


オンライン講座のよくある5つの始め方と、その問題点

オンラインでやろうと決めたあと、実際にどこから手をつけるかは人によって違います。以下は順番に進む段階ではなく、それぞれ独立した選択肢だと考えてください。多くの方が、このうちのどれか、あるいは複数を並行して試しています。

ZoomやGoogle Meetで始めると、最初に決済で詰まる

一番手軽なのは、手元にあるオンラインミーティングツールをそのまま使う方法です。ZoomやGoogle Meetでレッスンの時間をつなぐ。生徒は、すでに教えている人に声をかけるか、SNSで見つけた人に案内する。

レッスンを届けるという一点だけを見れば、これで成立します。実際、この形から始める方は非常に多いです。

ところが、すぐに決済で引っかかります。月謝をどうやって受け取るのか。銀行振込を案内すれば回らなくはありませんが、毎月の入金確認を自分でやることになります。振込を忘れる生徒も出てきます。催促の連絡は、教える立場としてはあまりしたくないものです。

クレジットカードで自動的に引き落とせないか。申し込みから決済まで、生徒が自分で完結できる形にできないか。そう考え始めたところで、多くの人が次の選択肢を探し始めます。

スキルマーケットは、登録しても半年で申し込みゼロということが珍しくない

次に候補に挙がるのが、ストアカ等に代表されるマーケットプレイス型のプラットフォームです。

こちらは決済も申し込みフォームも最初から用意されています。プロフィールを作り、講座を登録すれば、その日から販売できる状態になります。集客も、プラットフォームに来ている利用者に見てもらえる可能性がある。とりあえずここから始めよう、と考えるのは自然な判断です。

問題は、登録したあとです。

先ほどのピアノ講師の方は、Thinkificに移る前にマーケットプレイス型のプラットフォームに講座を掲載していました。結果は、半年以上経っても申し込みゼロ。閲覧数こそ多少はあったものの、成約には一件もつながらなかったそうです。

これは特別に運が悪かった例ではありません。この種のプラットフォームは、すでに多数の講師がひしめく激戦区になっています。検索結果の上位に表示されるのは、レビュー件数が多く、実績が積み上がっている講師です。新規で登録した人が、その中から見つけてもらえる確率は決して高くありません。

つまり、登録しただけでは集客の役には立ちません。ここを誤解したまま掲載すると、準備にかけた時間がそのまま無駄になります。

生徒が付いたら付いたで、手数料を2割3割持っていかれる

それでも、なんとか1人、2人と申し込みが入ることはあります。ここで次の問題が出てきます。

マーケットプレイス型のプラットフォームは、成約額に対して手数料を取ります。その水準は決して低くありません。2割、3割という規模で差し引かれるケースがあります。

月謝制のレッスンであれば、この手数料は毎月かかり続けます。生徒が1年続けてくれれば、1年分の手数料を払い続けることになります。

納得できる金額なら問題ありません。集客を代行してもらった対価だと考えれば、成果報酬として妥当という見方もできます。ところが実際には、集客はほとんど自分でやっているのに手数料だけは取られる、という状態になりがちです。

自分のSNSで告知して、興味を持ってくれた人にリンクを送る。その人が申し込んでくれる。プラットフォームは何もしていないのに、売上の2割か3割を持っていく。この構図に気づいたとき、多くの方が「ここでやり続ける意味があるのだろうか」と考え始めます。

ただ、そこで手が止まります。他にどうすればいいのかが分からないからです。決済も申し込みフォームも自分では用意できない。だから結局、そのプラットフォームに留まり続けることになります。

スキルマーケットのもう1つの制約は、フォーマットが決まっていること

手数料の話ばかりが注目されますが、実務上はもう1つ大きな制約があります。

マーケットプレイス型のプラットフォームには、決められた掲載フォーマットがあります。単発のレッスン、あるいは回数が決まった講座。その型に合わせないと掲載できません。

これが、先ほどの「継続維持型」の動機とかみ合いません。

このピアノ講師の方が困ったのは、まさにこの点でした。毎月レッスンを受けている既存の生徒に、この形は使えなかったのです。既存の生徒が求めているのは、決まった回数で終わる講座ではありません。今まで通り、毎月続くレッスンです。ところがプラットフォームのフォーマットは、それを想定していませんでした。

新規集客の役にも立たず、既存の生徒の受け皿にもならない。結果として、掲載までにかけた労力がまるごと無駄になったという結末でした。

YouTubeは収益化要件を満たすまでが遠く、満たしても加入率が低い

動画で教える分野であれば、YouTubeという選択肢もあります。メンバーシップ機能を使えば、月額課金の限定コンテンツを提供できます。

ただしここには、明確な入り口の条件があります。YouTubeで収益化を有効にするには、チャンネル登録者1,000人以上、かつ直近12か月の公開動画総再生時間4,000時間以上という要件を満たす必要があります。この条件を満たさない限り、広告収益もメンバーシップも使えません。

この要件が、想像以上に高い壁になります。実際にチャンネルを運営している方によれば、1年間コンスタントに投稿を続けても、この条件に届かない人は珍しくないとのことでした。教える仕事をしながら動画制作を続けること自体が、相当な負荷になります。

そして要件を満たしたあとにも、別の壁が待っています。

教育系コンテンツを配信している、あるチャンネル運営者の数字を紹介します。この方のチャンネル登録者は5,000人を超えていますが、メンバーシップの加入者は20人前後です。無料で見てくれる視聴者のうち、有料の会員になってくれる人の割合は、それほどまでに小さいという実感を語っていました。

YouTubeの広告収益だけで講座の代わりにするのは難しい

メンバーシップではなく広告収益で成り立たせる、という考え方もあります。ただ、この道はさらに険しくなります。

同じ運営者の方の実感として、15分程度の動画が1万回再生されて、広告収益は10ドルに届くかどうかという水準だそうです。そして、その1万回再生自体が滅多に起きません。

チャンネル登録者が2万人、3万人という規模であっても、投稿するすべての動画が1万回再生されるわけではありません。どの動画を出しても1万回に届くようになるのは、登録者10万人から20万人という世界の話になります。

そこを目指すのであれば、必要になるのは講師としての力量ではありません。動画で人を惹きつける、いわばタレントとしての才能です。教えることが本業の方にとって、そこを主戦場にするのは現実的な選択とは言いにくいでしょう。

noteは誰でも始められるが、読んでくれる人を見つける難しさは変わらない

文章で教える分野であれば、noteという選択肢もあります。

noteにはYouTubeのような収益化要件がありません。アカウントを作れば、その日から有料記事を販売できます。月額のメンバーシップも設定できます。入り口のハードルは、比較にならないほど低いと言えます。

しかし、始められることと売れることは別の話です。

有料記事を公開しても、それを見つけて、お金を払って読もうと決めてくれる人がいなければ売上にはなりません。この「見つけてもらう」部分は、noteが解決してくれるわけではありません。結局のところ、自分で読者を連れてくる必要があります。

入り口の条件が緩いぶん、集客の難しさがそのまま残る構造になっています。

SNSでフォロワーが集まっても、申し込みの受け皿がない

最後に、XやInstagramでの集客です。

自分の専門分野について有益な発信を続ける。少しずつフォロワーが増える。ここまでは、時間をかければ多くの人が到達できます。ここで挙げている講師の方々も、数百人規模のフォロワーは獲得していました。

問題はその次です。集まってくれた人に、自分のレッスンや講座を案内しようとしたときに、案内する先がありません。

必要なのは、申し込みを受け止める場所です。講座の内容と料金を説明するランディングページ。申し込みフォーム。決済の仕組み。申し込んだ人がログインして受講する会員システム。これらを自分で用意できるかというと、多くの講師にとっては現実的ではありません。制作会社に頼めば費用がかかりますし、自分で作るには専門知識が要ります。

そして受け皿がないと、どうなるか。すでに決済も申し込みも用意されているマーケットプレイス型のプラットフォームを使わざるを得なくなります。

ここで話が一周します。自分のSNSで時間をかけて集めた人が、そのプラットフォーム経由で申し込む。そして売上の2割か3割が手数料として引かれる。集客はすべて自分でやったのに、です。

月謝(サブスク)制に対応していないプラットフォームも

「オンラインで講師をやる」となると、真っ先に思いつくのが講師系プラットフォームです。しかし、日本国内のこうしたプラットフォームには、意外なことに「月謝制(月額サブスク)」に対応していない場合も珍しくありません。

例えば、買い切りのコース販売だったり、オンライン・レッスンの日時を決めて都度ごとに予約を受け付けるなど、月謝制ではない販売方法になっています。

しかし実際には、教える側も教わる側も、「月謝制」つまり月額サブスク課金で行いたいのが通常です。

月額サブスクは、Youtubeやnoteのメンバーシップなら対応している

月額サブスクは、Youtubeやnoteのメンバーシップが対応しています。そのため、オンライン講座専門のプラットフォームではないものの、こうしたサービスを使って月額制のオンライン講座を開こうと考える人もいるでしょう。

しかし実際には、月額サブスクができるメリットの裏に、さまざまなデメリットも潜んでいます。


YouTubeやnoteなど、収益化できても「コース」を組めない場合も

ここまでは、集客と手数料という「お金と人の流れ」に関する壁を見てきました。しかし、各プラットフォームを実際に検証し、講師の方々の声と突き合わせていくと、それとは別の、より根深い問題が見えてきます。

YouTubeとnoteには、そもそも「コース」が載らないのです。

なお、この問題はマーケットプレイス型のプラットフォームには当てはまりません。あちらは講座を売るために作られているので、コースとしての体裁は整えられます。ここで指摘しているのは、YouTubeとnoteという、本来コース販売のために設計されていないプラットフォームで講座をやろうとしたときに起きることです。

第1回から順番に履修してもらう仕組みがない

まとまった講座には、順序があります。

第1回で基礎を説明し、第2回でそれを使った練習をして、第3回で応用に進む。この順番で受けてもらうことを前提に設計されています。第5回だけをいきなり見ても、内容は理解できません。

YouTubeには再生リストがあります。noteにはマガジンがあります。どちらも複数のコンテンツをまとめる機能ではありますが、「第1回を終えてから第2回に進む」という履修の順序を守らせる仕組みではありません。

視聴者は、リストの中から好きなものを好きな順番で見られます。それはYouTubeの視聴体験としては正しい設計ですが、講座としては困ります。順番を飛ばして見た人が「よく分からなかった」と感じて離れていく、という事態が起きます。

新しい投稿を出すたびに、作ったコースが埋もれていく

もう1つ、より構造的な問題があります。

YouTubeもnoteも、「新しいコンテンツを次々に見ていく」ことを前提に設計されたプラットフォームです。チャンネルページを開けば新着順に動画が並びます。noteのプロフィールページも同様です。アルゴリズムも、基本的には新しい投稿を優先して露出させます。

この設計は、日々の発信には向いています。しかし講座には向きません。

時間をかけて作り込んだ全10回の講座を公開したとします。その後も発信を続ければ、新しい動画や記事がどんどん上に積まれていきます。数か月もすれば、その講座は自分のページの奥深くに沈んでいきます。

新規の訪問者は、まず最新の投稿を見ます。奥に沈んだ講座に辿り着く人はごくわずかです。いい講座を作っても、時間の経過とともに売れなくなっていく。これはコンテンツの質の問題ではなく、プラットフォームの構造の問題です。

生徒がどこまで理解できているか確認できない

3つ目は、教える側にとって見過ごせない問題です。

対面のレッスンであれば、生徒の表情や手の動きから、理解できているかどうかが分かります。分かっていなさそうであれば、その場で説明を変えられます。

オンラインの動画教材では、それができません。だからこそ、理解度を確認する別の手段が必要になります。小テストを出して回答してもらう。課題を提出してもらう。一定の基準を満たしたら修了証を出す。こうした仕組みがあれば、生徒の状態を把握できますし、生徒自身も自分の進み具合を確認できます。

YouTubeにもnoteにも、この機能はありません。誰がどこまで見たのかすら、講師には分かりません。テストを出すことも、修了証を発行することもできません。

順番に学べない。作ったものが埋もれる。理解度が分からない。この3つが揃うと、体系立てた講座を届けることは事実上できません。これはプラットフォームの出来が悪いという話ではなく、そもそもそういう用途のために作られていない、ということです。


ツールの組み合わせでは、運用が回らなくなる

ここまで挙げた不足を、他のツールで補おうとするのは自然な発想です。実際、多くの方がそうしています。しかし、この解決策には別の問題があります。

楽器のレッスンは、動画教材だけでは完結しない

まず、そもそも動画だけでは完結しない分野があります。実技を伴うものです。

ピアノやギターを教えている講師の方によれば、演奏の指導には、どうしてもその場で見て直す工程が必要になります。指の使い方、姿勢、力の入れ方。動画教材で理論を伝えることはできますが、生徒が実際にどう弾いているかを見なければ、直すべき点は分かりません。

つまり実技系の分野では、オンデマンドの動画教材と、リアルタイムでつなぐレッスンの両方が必要になります。どちらか一方では成立しません。

動画はYouTube、レッスンはZoom、決済は別。この構成は生徒にも面倒

そうなると、こういう構成を考えることになります。

基礎的な内容はYouTubeのメンバーシップで動画として提供する。個別指導はZoomでつなぐ。その予約は予約システムで受け付ける。決済は別の決済サービスを使う。案内はメールで送る。

理屈のうえでは成立します。しかし実際に運用してみると、両側に負荷がかかります。

講師側は、複数のサービスを行き来しながら管理することになります。誰が入金したか、誰が予約を入れたか、誰がどこまで受講したか。それぞれ別の場所にデータがあり、突き合わせる作業が発生します。生徒が10人を超えたあたりから、この管理は無視できない負担になります。

そして生徒側は、もっと直接的に面倒です。動画を見るにはYouTubeのメンバーシップに加入し、レッスンを受けるには別のサイトで予約を取り、支払いはまた別の場所で行う。それぞれにログインが必要で、それぞれから通知が届きます。

講師の方々が口を揃えて指摘するのは、この「面倒くささ」が離脱の原因になるという点です。生徒は、教わることをやめたいわけではありません。手続きが煩雑だから、続けるのが億劫になるのです。そして「じゃあ、いいか」となってしまう。

継ぎはぎの構成は、管理が大変というだけの話ではありません。生徒を逃がす原因そのものになります。


「もっとフォロワーを増やせばいい」という発想が報われない理由

さて、ここまで様々な壁を見てきました。これらに直面したとき、多くの方が取る対処法があります。

母数を増やすことです。

受け皿がないなら、とにかく人を集めよう。フォロワーが3,000人、5,000人といればその中の1パーセントか2パーセントは生徒になってくれるはずだ。だからまずSNSを伸ばそう、チャンネル登録者を増やそう。そう考えます。

この発想は、一見すると合理的です。ところが、実際にはうまくいきません。その理由を、具体的な数字で見ていきます。

登録者が2,000人から5,000人に増えても、有料会員は20人のままだった

先ほど触れた、教育系コンテンツを配信しているチャンネル運営者の方の実データを紹介します。

このチャンネルは、運営開始からおよそ2年が経過しています。最初の1年でチャンネル登録者は2,000人程度まで伸び、次の1年で5,000人規模に達しました。現在は5,000人を超えています。数字だけを見れば、順調に伸びているチャンネルです。

メンバーシップを開始したのは、登録者が2,000人台だった時期でした。開始当初の加入者は20人程度。

そして現在、登録者は当時の倍以上になっています。メンバーシップの加入者は何人になっているか。20人前後です。

開始から1年が経ちましたが、規模はほとんど変わっていません。毎月数人ずつ新しく加入してくれる人はいます。しかし、ほぼ同じ人数が抜けていきます。結果として、総数が動かない。

この運営者の方は、動画の中で繰り返しメンバーシップを案内してきたそうです。それでも数字は動きませんでした。宣伝が足りなかったわけでも、告知の仕方が悪かったわけでもない。母数を増やすという努力そのものが、有料会員の増加につながらなかったのです。

ラジオの看板番組を持つギター講師でも、生徒は積み上がらなかった

もう1つ、別の角度からの事例です。

もう一人、ギターを教えている講師の方がいます。この方は、ローカルFMで自分の名前が付いた番組を持っています。演奏家としても、メジャーアーティストのバックで演奏した経歴があります。実力があり、地域での知名度もある方です。

その方でも、オンラインで生徒が積み上がっていかないという状況は同じでした。

この事例が示すのは、知名度不足という説明が成り立たないということです。人気があれば解決する問題なら、この方は解決できているはずです。しかしそうはならなかった。

本当の壁は決済ではなく、生徒が積み上がる仕組みがないこと

これらの事例から見えてくるのは、課題のレイヤーが2つあるということです。

1つ目は、目に見えやすい壁です。決済をどうするか、申し込みをどう受けるか、動画をどこに置くか。誰もがすぐに思いつきますし、実際に壁でもあります。

2つ目は、本当に効いている壁です。集めた人を受け止めて、価値のある学習体験を提供して、続けてもらう。その仕組みが作れないという壁です。

多くの方は1つ目の壁に取り組みます。決済サービスを探し、動画の置き場所を探し、予約システムを探す。しかし、それらを全部解決しても状況は変わりません。2つ目の壁が残っているからです。

先ほどのチャンネルには、メンバーシップというサブスクリプション課金の仕組みがありました。決済の問題は解決していたわけです。それでも会員は増えませんでした。

そして母数を増やす努力も、この壁の前では報われません。上流をいくら太くしても、受け止める器がなければ流れ落ちていくだけです。登録者が2,000人から5,000人に増えても会員数が変わらなかったのは、まさにそういうことです。


オンライン講座に必要なのは、生徒の「受け皿」

では、その「受け皿」とは具体的に何を指すのでしょうか。ここまで見てきた壁を裏返すと、必要な条件が浮かび上がってきます。弊社では、次の3つに整理しています。

条件1 無料のファンを、有料の生徒に変える導線があること

SNSやYouTubeで発信して、興味を持ってくれた人がいる。その人が「申し込みたい」と思ったときに、迷わず辿り着ける場所が必要です。

具体的には、講座の内容と料金が説明されたページと、そこから申し込みと決済まで完結できる流れです。この1本の導線がないと、発信でどれだけ関心を集めても、申し込みには変換されません。

条件2 入った人が続けたくなる、学習体験があること

申し込んだ人が、順番に学んで、少しずつできることを増やしていける。その実感が持てる構造が必要です。

これは決済の仕組みとは別の話です。この点は誤解されやすいので、後ほど改めて詳しく触れます。

条件3 必要なものが1か所で完結すること

動画も、ライブレッスンも、決済も、会員管理も、同じ場所で扱えること。講師の管理負荷を下げるためであり、それ以上に、生徒に面倒をかけないためです。

この3つを満たす場所があれば、これまで積み上がらなかった努力が積み上がるようになります。次の章では、その条件を満たすプラットフォームを1つ紹介します。


オンライン講座の課題を解決する「Thinkific」(シンキフィック)という選択肢

弊社ではこれまで、海外のオンライン講座プラットフォームを複数契約して検証してきました。その中で、先ほどの3条件を満たすものとして挙げられるのが、Thinkific(シンキフィック)です。

Thinkificとは、コース販売のために作られたプラットフォーム

Thinkificは、カナダのバンクーバーに本社を置く企業が2012年から提供しているサービスです。運営会社はトロント証券取引所に上場しています。100か国以上、35,000社を超える事業者に利用されており、累計の受講者数は2億1,400万人を超えると公表されています。

日本での知名度は高くありませんが、英語圏では主要なオンライン講座プラットフォームの1つとして定着しています。

重要なのは、このサービスが「講座を作って売る」という目的のために設計されている点です。動画共有サイトでもなければ、ブログサービスでもありません。だからこそ、これまで見てきた不足が最初から埋まっています。

第1回から順番に積み上がるコースを設計できる

Thinkificでは、コースを章とレッスンの階層で構成します。第1章、第2章という単位で内容を分け、その中に動画やテキスト、テストを配置していきます。

そして、受講の順序を制御できます。前のレッスンを完了しないと次に進めないようにする設定があります。これによって、講師が意図した順番で学んでもらうことができます。

さらに、ドリップ配信という機能があります。申し込みから何日後にこの章を公開する、という指定ができる仕組みです。全部を一度に渡すのではなく、週に1章ずつ開いていくといった設計が可能になります。一気に見て満足して終わる、という事態を防ぎ、学習のペースを保つ効果があります。

作ったコースが新着投稿に押し流されることもありません。コース一覧やトップページの構成は自分で設計できるため、初めて訪れた人にどのコースを見せるかをコントロールできます。

ランディングページで、SNSからの導線をつなげられる

Thinkificには、サイトを構築する機能が含まれています。コースの紹介ページ、いわゆるランディングページを作ることができます。

これが、条件1に対する答えになります。

実際に運用している方が言っていたのは、ページが1枚あるだけで「とにかくここに来てもらえばいい」という場所ができる、ということでした。

具体的な使い方としては、Xで自分の専門分野について有益な投稿を続けていき、反応が良かった投稿への返信という形でリンクを置く。あるいはプロフィールや固定ポストに置いておく。YouTubeであれば概要欄に置く。どこから来た人も、同じページに集まります。

そのページには講座の内容と料金が書かれていて、そのまま申し込みと決済まで進めます。SNSの発信から申し込みまでが、1本の線でつながります。

オンデマンドとライブレッスンを、同じ場所で提供できる

Thinkificでは、動画を見て進めるオンデマンド形式のコースと、日時を決めて集まるライブ形式のレッスンを、同じプラットフォーム上で扱えます。Zoomとの連携機能があり、コースの中にライブセッションを組み込めます。

これが、条件3に対する答えの中心部分です。

実技を伴う分野では、この組み合わせが特に効きます。基礎的な知識や練習方法はオンデマンドの動画で学んでもらい、実際の演奏を見る部分だけライブでつなぐ。生徒から見れば、どちらも同じサイトの中にあります。ログインする場所は1つです。

オンデマンドを持つと、抱えられる生徒数の上限が外れる

もう1つ、オンデマンドには経営面での効果があります。

対面レッスンでもグループレッスンでも、講師が付きっきりで教える形である限り、抱えられる生徒数には物理的な上限があります。1日は24時間しかなく、レッスン1コマには決まった時間がかかります。生徒を増やそうとすれば、自分の時間を削るしかありません。

オンデマンドのコースは、この制約を受けません。一度作った動画教材は、10人が受講しても100人が受講しても、講師の作業時間は変わりません。

すべてをオンデマンドにする必要はありません。付きっきりで教える部分は残しつつ、自習で進められる部分をオンデマンドに移していく。それだけで、受け入れられる人数の上限は変わってきます。

買い切り、月謝、バンドル。売り方を自分で決められる

Thinkificでは、1つのコースに対して複数の販売形態を設定できます。

一度払い切りの買い切り型。毎月課金される月謝型。複数のコースをまとめて販売するバンドル型。無料で公開して入り口にする形。これらを組み合わせて使えます。

AI活用講座を運営している方は、この自由度を評価していました。生徒全員を月謝制に押し込む必要はなく、たとえば入門的な内容だけを買い切りで販売して、そこから継続的な講座に案内するといった設計ができるからです。

先ほど、マーケットプレイス型のプラットフォームは掲載フォーマットが決まっていて、既存の月謝制の生徒に使えなかったという話をしました。Thinkificではその制約がありません。自分の教室のやり方に合わせて、販売の形を決められます。

クイズと修了証で、生徒の理解度を確認できる

Thinkificには、コースの中にクイズを組み込む機能があります。選択式の設問を作り、合格点を設定できます。理解が足りない部分があれば、生徒自身がその場で気づけます。

課題の提出機能もあります。生徒が作成したものをアップロードしてもらい、講師が確認してフィードバックを返す。実技系の分野であれば、演奏を録画して提出してもらうといった使い方ができます。

そしてコースを修了した生徒には、修了証を発行できます。2026年に入ってからは、認定資格の発行に対応した機能も追加されています。

修了証は、生徒にとって形に残る成果になります。学んだことの証明として使えますし、達成感にもつながります。

集客を助けてくれない相手に、手数料を払わなくていい

最後に、費用構造の話です。

Thinkificは月額のプラン料金を支払って使うサービスです。そして有料プランを契約している限り、Thinkificに対して売上に応じた販売手数料を支払う必要はありません。

生徒が増えても、月謝の総額が増えても、Thinkificに支払う金額は変わりません。マーケットプレイス型のように、売上の2割3割が差し引かれるという構造ではありません。

なお、決済そのものにはクレジットカード決済サービスの手数料がかかります。この点については後ほど、日本から利用する場合の注意点として改めて触れます。

プランによって使える機能が変わる

Thinkificには複数の料金プランがあります。以前は無料プランが提供されていましたが、現在は廃止されており、無料トライアルに置き換わっています。この点は、古い情報を掲載している記事が多いので注意してください。

プランは、機能の範囲によって4段階に分かれています。金額は変更されることがあり、期間限定のキャンペーンが実施される場合もあるため、最新の情報は公式サイトでご確認ください。ここでは、どのプランで何が使えるかという機能面の違いを整理します。

機能BasicStartGrowPlus
コース作成・販売対応対応対応対応
ランディングページ対応対応対応対応
コミュニティ1つ1つ3つ無制限
修了証の発行非対応対応対応対応
課題の提出機能非対応対応対応対応
Zoom連携(ライブレッスン)非対応対応対応対応
Thinkificのブランド表記の削除非対応非対応対応対応
API・Webhook連携非対応非対応対応対応
管理者アカウント数126個別対応

個人の講師が始める場合、判断の分かれ目になるのは修了証とZoom連携です。この2つはBasicプランでは使えません。ライブレッスンを組み込みたい場合や、修了証を出したい場合は、Startプラン以上を検討することになります。


サブスク決済があるだけでは、生徒は続かない

先ほど、受け皿の条件2として「入った人が続けたくなる学習体験」を挙げました。ここは誤解されやすい部分なので、章を改めて説明します。

継続を生むのは課金の仕組みではなく、学習体験そのもの

月額課金の仕組みさえあれば、生徒は継続する。そう考えてしまいがちです。毎月自動的に決済されるのだから、放っておいても続くだろう、と。

しかし、それは違います。

その証拠に、YouTubeのメンバーシップもnoteのメンバーシップも、仕組みとしては月額課金のサブスクリプションです。決済は自動で行われます。それでも、先ほど紹介したチャンネルでは会員数が20人前後から動きませんでした。毎月数人が入り、毎月同じくらいが抜けていく。

サブスクリプション課金は、支払いを自動化する仕組みにすぎません。続ける理由そのものを作ってくれるわけではないのです。

では、何が継続を生むのか。学習体験そのものです。

これを学んだことで、理解できることが増えた。できることが増えた。自分の実力が上がった。その実感があってはじめて、次はこれも学んでみよう、次はこれもやってみようという意欲が生まれます。この積み重ねが、続ける理由になります。

逆に言えば、「入っているけれど特に何も進んでいない」という状態が続けば、人は解約します。月額課金だから続く、ということはありません。

ここまで見てきたプラットフォームの多くは、この学習体験を設計できませんでした。順番に学べず、進み具合も分からないからです。設計できるマーケットプレイス型は、今度は手数料が重くのしかかる。この2つを同時に満たせる場所が、これまで見当たらなかったということになります。

小さなコースを追加し続けること自体が、続ける理由になる

継続の理由には、もう1つ別の種類があります。新しいものが増えていくという期待です。

たとえば、3回から5回程度で学び終わる小さな講座を、3か月に1回、あるいは半年に1回のペースで追加していく。この運営スタイルをとると、生徒側には「次も何か出てくる」という期待が生まれます。

実際に講座を運営している方の中には、この点を重視している人もいます。コンスタントに新しいコースが追加されるという状態そのものが、契約を続ける動機になるからです。

これは、学習体験による内発的な動機とは別の原理です。片方は「学べているから続けたい」、もう片方は「次も来るから続けたい」。この2つが揃うと、継続率はかなり変わってきます。

そして、この運営スタイルが取れるかどうかは、プラットフォームの構造に左右されます。新しいものを出すと古いものが埋もれていく設計では、コースを積み増していく戦略は成立しません。Thinkificはコース一覧を自分で設計できるため、増やしても既存のコースが見えなくなることはありません。


Thinkificを始めるときにつまずきやすい2つのポイント

ここからは、実際に始めるにあたって注意しておきたい点をお伝えします。実際に検証する中で、そして講師の方々の話を聞く中で、特に多くの方がつまずくポイントが2つありました。

英語のハードルは、対訳リストの設定で越えられる

Thinkificは海外のサービスです。初期状態では、管理画面も生徒が見る画面も英語で表示されます。

ここで手が止まる方が非常に多いというのが、実際に始めた方を見ていての実感です。自分が使いこなせるかという不安に加えて、生徒が戸惑ってしまうのではないかという懸念が出てきます。教える側としては、後者のほうが深刻です。

しかし結論から言えば、この壁は越えられます。

Thinkificには対訳リストという設定機能があり、これを設定することで、生徒が見る画面はもちろん、管理画面まで日本語化することができます。ブラウザの翻訳機能に頼る必要はありません。

英語が理由でThinkificを候補から外している方は少なくないと思いますが、日本語化できることを知らないまま諦めてしまうのは、もったいない話です。

具体的な設定手順については、弊社の別記事で詳しく解説しています。実際の画面を見ながら進められる形にまとめていますので、こちらをご参照ください。

Thinkificの日本語化について詳しく見る

最初から大作を作ろうとすると、公開まで辿り着けない

もう1つは、講座の作り方に関するつまずきです。

これは、ある講師の方がご自身で経験した失敗として語ってくれたものでした。

やる気があるほど、最初から充実したものを作ろうとします。全20回、全30回という構成を考え、それを全部撮り終えてから公開しようとする。教える内容に自信がある人ほど、この方向に進みがちです。

しかし、これは2つの意味で失敗しやすいやり方です。

1つ目は、単純に時間がかかりすぎることです。動画を30本撮って編集するとなれば、数か月がかりの作業になります。その間、集客には一切手を回せません。しかも作っている最中は収益がゼロなので、モチベーションを保つのも大変です。途中で止まってしまい、公開まで辿り着かないというケースも起こります。

2つ目は、生徒側の心理です。全30回の講座をいきなり提示されると、申し込む側はハードルの高さを感じます。時間が取れるだろうか、最後まで続けられるだろうか、と考えてしまう。結果として「今回は見送ろう」となります。作り込んだことが、逆に申し込みを妨げてしまうわけです。

3回から5回で終わる小さな講座から始める

ではどうするか。小さく始めることです。

3回から5回程度で学び終わる、テーマを絞った講座を1つ作る。それを公開して、実際に売ってみる。生徒の反応を見て、次の講座を作る。この繰り返しで増やしていきます。

このやり方には、いくつも利点があります。

まず、公開までが早いです。数本の動画であれば、数日から数週間で形になります。早く公開できれば、早く反応が得られます。

次に、申し込みのハードルが低くなります。3回で終わる講座なら、試しに受けてみようと思いやすい。そこで満足してもらえれば、次の講座にも申し込んでもらえます。

そして、先ほど述べたように、コースが定期的に増えていくこと自体が継続の動機になります。

一般的なプラットフォームでは、この戦略は取りにくいものでした。新しいものを出すと古いものが埋もれていくため、増やせば増やすほど過去の講座が見えなくなるからです。Thinkificではコースの見せ方を自分で設計できるため、増やしても埋もれません。小さく始めて積み増していくやり方と、相性が良いと言えます。


実際に使っている2つの現場

ここまで機能や考え方の話をしてきましたが、実際に運用するとどうなるのか。ここまで触れてきた2つの事例を、改めて詳しく紹介します。

いずれも、事業者を特定できる形での掲載許可を得ていないため、数字と経緯のみをお伝えします。分野も規模も異なる2例ですが、共通する構造が見えてきます。

事例1 ピアノ講師。離れた生徒10人が戻り、SNSから5人

1つ目は、ピアノを教えている個人の講師の方です。

先ほど触れた通り、この方はThinkificに移る前に、マーケットプレイス型のプラットフォームに講座を掲載していました。結果は半年以上申し込みゼロ。加えて、既存の月謝制の生徒にはフォーマットが合わず、受け皿としても使えませんでした。

Thinkificに移行してからの構成は、シンプルです。コースを用意し、ランディングページを作った。それだけです。

集客の中心になったのは、既存の生徒への案内でした。過去に対面で教えていた生徒のうち、引っ越しなどで通えなくなった方に対して、オンラインで対応できるようになったのでもう一度続けませんか、という案内を出しました。ここから10人程度が戻ってきました。

これに加えて、SNSからの集客です。フォロワー数500人程度のアカウントから、5人程度が申し込みました。

合計でおよそ15人。月謝が3,500円程度なので、月額の売上はおよそ52,500円になります。

この金額をどう見るかですが、正直に言えば、これ一本で生計を立てられる水準ではありません。ただし、個人で教えている方の多くは、他に仕事や収入源を持ったうえで講師業をしているのが実態です。その前提で見れば、決して悪くない規模だと言えます。

そして重要なのは、これがThinkific導入から3か月程度の初動の数字だという点です。ここから講座を増やし、告知を続けることで、伸ばしていく余地は十分に残されています。

事例2 ビジネス向けAI講座。YouTube登録者3,000人から生徒数30人

2つ目は、ビジネスパーソン向けにAIの活用方法を教えている方です。

もともとこの方は、AI関連やテクノロジー関連の情報をYouTubeで発信していました。ニュースの解説などを継続する中で、視聴者から「実際の使い方を教えてほしい」という声が寄せられるようになり、オンライン講座を始めることにしました。

最初に試したのは、YouTubeのメンバーシップでした。しかし、ここで苦戦します。順番に学べる構成にできない、動画が新着に押し流される、といった問題が起きました。その後、Thinkificに行き着いたという経緯です。

現在の数字は、YouTubeのチャンネル登録者がおよそ3,000人。そこを入り口として、Thinkificの講座に参加している方が30人規模です。しかもこの数字は、少しずつ増え続けています。

この事例で注目したいのは、比較です。

先ほど紹介した別のチャンネル運営者の方は、登録者5,000人超でメンバーシップ会員が20人前後、しかも1年間動いていませんでした。こちらは登録者3,000人で30人、なおかつ増加傾向にあります。

母数はこちらのほうが少ないのに、有料の受講者は多い。そして伸びている。YouTubeの中で完結させるか、外に受け皿を置くか。その差が、そのまま数字に出ている形です。

この方の場合も、これ一本で生計が立つ水準ではありません。ただ、複数の販売形態を使い分けられる余地が残っています。たとえば入門編だけを買い切りで販売して新規の入り口を広げる、といった展開が考えられます。

2つの事例が示していること

分野もまったく違い、集客の入り口も違います。一方は既存の対面生徒の呼び戻しが中心で、実技を伴う分野。もう一方はYouTubeの無料視聴者からの転換が中心で、知識を教える分野です。

それでも、起きていることは同じです。受け皿を用意したら、それまで積み上がらなかったものが積み上がり始めた。

どちらも爆発的な数字ではありません。しかし、確実に前に進んでいます。そしてどちらも、まだ初期段階です。


日本でThinkificを使う場合に知っておきたいこと

ここまで良い面を中心に説明してきましたが、日本から利用する場合には、事前に知っておくべき制約があります。弊社が実際に検証する中で確認した内容をお伝えします。

決済はStripeまたはPayPalを使うことになる

Thinkificには、Thinkific Paymentsという独自の決済機能があります。これを使うと、注文時の追加提案や後払い決済など、販売を後押しするための機能が利用できます。

ただし、この機能には対応国が定められており、現時点で日本は含まれていません。対象は米国、カナダ、英国、EU各国、シンガポール、香港、オーストラリアなどです。

そのため、日本の事業者がThinkificで販売する場合は、Stripe(ストライプ)またはPayPalを接続して決済を行うことになります。この2つはいずれも日本で利用できるサービスなので、決済自体は問題なく行えます。

ただし、Thinkific Paymentsを前提とした一部の販売機能については、利用できない可能性があります。この点は、導入前に確認しておくべきポイントです。

一方で、知っておくと安心な点もあります。Thinkificは、Thinkific Paymentsが使える国の事業者が外部の決済サービスを使う場合に、追加の手数料を課しています。しかし公式のFAQには、自国でThinkific Paymentsが利用できない場合はこの手数料が課されないと明記されています。日本の事業者はこれに該当するため、追加手数料の対象にはなりません。

まとめると、日本から利用する場合の費用は、Thinkificの月額プラン料金と、Stripeなど決済サービスの手数料の2つです。売上に応じてThinkificに支払う販売手数料は発生しません。

サイトで扱える通貨は1つだけ

もう1点、通貨に関する仕様があります。

Thinkificでは、1つのサイトに対して設定できる通貨は1種類のみです。日本の事業者であれば日本円を設定することになりますが、その場合、すべてのコースが日本円建てで販売されます。

日本円と米ドルを併用して、国内向けと海外向けで価格を分ける、といった運用はできません。海外の受講者も対象にしたい場合は、日本円での購入をお願いすることになります。

なお、一度売上が発生したあとに通貨を変更することは推奨されていません。同じ顧客が異なる通貨で購入することを決済サービス側が許可していないためです。最初に設定する段階で、どの通貨で販売するかを決めておく必要があります。

完全にゼロの状態から始めるのには向かない

最後に、正直にお伝えしておきたい点があります。

Thinkificは、まだ誰にも知られていない状態から始める人にとって、最適な選択肢とは言えません。

理由は明快で、Thinkificは集客をしてくれるサービスではないからです。マーケットプレイス型のプラットフォームと違い、そこに人が集まっているわけではありません。自分のサイトを持つのと同じで、人を連れてくるのは自分の仕事になります。

ここで紹介した2つの事例も、どちらも入り口を持っていました。ピアノ講師の方には既存の生徒がいました。AI講座の方にはYouTubeの視聴者がいました。その入り口があったからこそ、受け皿が機能したのです。

したがって、講師としての実績がまったくなく、ファンも生徒も1人もいないという段階であれば、まずSNSやnote、YouTubeで自分の教えたいことを発信し、一定の関心を集めるところから始めるほうが現実的です。そこで手応えが出てきた段階でThinkificに移行し、有料の講座を販売していく。この順番のほうが、うまくいきやすいと考えています。

逆に言えば、すでに生徒がいる方、すでに数百人でもフォロワーがいる方にとっては、今が受け皿を用意するタイミングだということになります。


オンライン講座の運営、増やすべきはフォロワー数ではなく、転換率と継続率

最後に、この記事全体を通して見えてきたことを整理します。

多くの講師の方が、オンラインで思うようにいかないとき、「もっと人を集めなければ」と考えます。フォロワーを増やそう、登録者を増やそう、と。

しかし、ここまで見てきた数字が示しているのは、別のことです。

受け皿がない状態では、3,000人や5,000人といった規模のフォロワーを集めても、有料の生徒は10人か20人にしかなりません。しかも、その数は増えていきません。そして、ゼロからその規模を目指すのは、多くの講師にとって現実的な道ではありません。

一方、受け皿がある状態であれば、必要な規模はまったく変わってきます。

必要なフォロワー規模得られる生徒数その後
受け皿がない場合3,000人から5,000人10人から20人増えないまま横ばい
受け皿がある場合300人から500人5人から15人講座を増やしながら伸ばせる

ここで紹介した事例では、フォロワー500人規模のアカウントから5人が申し込み、登録者3,000人のチャンネルから30人が参加していました。母数が多いほど生徒が多いわけではないことが、はっきりと表れています。

生徒を1人獲得するために、何人のフォロワーが必要なのか。この数字が、受け皿の有無によって大きく変わります。

SNSでの発信が無駄だと言いたいわけではありません。むしろ入り口としては必要です。ただ、その発信を受け止める場所がないまま量を増やしても、労力に見合った結果は返ってきません。

これまで発信を続けてきた方の努力は、方向が間違っていたわけではないと思います。ただ、受け止める器がなかった。だとすれば、次にやるべきは、フォロワーをさらに増やすことではなく、器を用意することです。

増やすべきなのは、フォロワー数ではありません。申し込みに変わる割合と、続けてくれる割合です。そしてその2つを決めるのが、受け皿の存在です。


まずはThinkificの無料トライアルで、実際の画面を見てみましょう

Thinkificには無料トライアルが用意されています。実際の管理画面に触れることができます。

いきなり本格的な講座を作る必要はありません。まずはアカウントを作り、コースの作成画面がどうなっているかを見てみる。ランディングページがどう作れるかを触ってみる。それだけでも、自分の教室に使えるかどうかの判断はかなりつくはずです。

弊社としても、実際に契約して検証したうえで、すでに生徒や読者を持っている個人講師の方にとっては有力な選択肢だと考えています。

Thinkificの無料トライアルを試してみる

なお、料金プランの内容や金額は変更されることがあり、期間限定のキャンペーンが実施される場合もあります。最新の情報は、公式サイトでご確認ください。

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