業務の効率化や情報共有の改善に向けて、新しいツールの導入を検討する企業は少なくありません。一方で、「現場で使いこなせるだろうか」「導入しても、従来のやり方に戻ってしまわないか」と、活用や定着を懸念することもあるでしょう。
2022年版の中小企業白書でも、デジタル化に取り組む際の課題として「従業員がITツール・システムを使いこなせない」が挙げられています。ツールの活用は、企業が実際に直面している課題の一つです。
ただし、使いこなせるかどうかは、担当者の操作スキルだけで決まるものではありません。自社の課題に合う機能があるか、業務の流れに組み込めるか、継続して運用できるかも関わります。
この記事では、業務ツールの導入を検討する企業に向けて、選定前に整理したい課題と、機能・運用・連携・費用の確認ポイントを紹介します。
業務ツール導入の不安は、操作を覚えられるかだけではない
業務ツールの導入にあたっては、さまざまな懸念事項があります。よくある不安をまずは確認していきましょう。
導入後の定着や運用まで、支援を受けられるかがわからない
必要な機能を備えたツールでも、自社の業務で使える状態にするには、初期設定や操作の習得、運用ルールの整備などが必要です。導入を検討する企業にとっては、その準備をどこまで自社で担い、どこから支援を受けられるかも気になるところでしょう。
公式サポートや導入支援サービスがあっても、対応範囲は確認が必要です。操作方法の問い合わせに答えてもらえるのか、設定を支援してもらえるのか、自社の業務に合わせた使い方や、導入後の運用についても相談できるのか。それぞれで、社内に必要な準備や体制は変わります。
支援の範囲がわからないままでは、導入後に現場で活用できるかも判断しにくくなります。ツールの機能とあわせて、定着・運用に向けてどのような支援を受けられるかを確認しておくことが大切です。
一部の人しか使わなければ、従来のやり方が残ってしまう
担当者が個人で使えることと、チームの業務で使い続けられることも別です。
たとえば、案件の進捗を共有するツールを導入しても、一部の担当者が更新せず、メールや口頭だけで報告を続けていたらどうなるでしょうか。全体の状況を把握するには、結局、従来の方法でも確認しなければなりません。
ツールを使っている担当者まで、別途Excelへ転記したり、同じ内容をメールで送り直したりすることになります。二重作業が増えれば、ツールを使う意味が薄れ、元の方法に戻ってしまうことも考えられます。
こうした問題を防ぐには、選定時点から、誰がどの業務で使うのか、情報をどう受け渡すのかまで考えることが大切です。
最初に決めたいのは、自社のどの仕事をどう改善するか
ツール名を探す前に、現場で起きている困りごとを具体化する
ツールの導入が検討に挙がる背景には、何らかの業務課題があるはずです。まずは、その課題を具体的にするところから始めます。
たとえば、「お客様への案内メールがうまく届かないので、CRMを導入したい」という相談を考えてみましょう。
この場合、「届かない」が何を意味するかによって、必要な対策は変わります。送信対象者の抽出に漏れがあるのか、送信したメールが受信されないのか、案内するタイミングを逃しているのか。それぞれ、確認すべき原因が異なります。
また、CRMと呼ばれるサービスでも、商談や営業活動の管理を中心にしたものと、多数の顧客へのメール配信などに重点を置くものでは、機能や使い方が異なります。
分類名や知名度から候補を探す前に、「誰が、どの作業で、何に困っているか」を整理することが、選定の出発点になります。
改善後の仕事の流れを描き、必要な機能を整理する
困りごとを整理したら、改善後にどのような仕事の流れを実現したいかを考えます。
案内メールの例であれば、顧客情報を登録し、案内する対象者を選び、メールを作成・確認して送信する流れがあります。そのうち、どの作業を変えたいのかを明らかにします。
対象者の選定に時間がかかっているなら、顧客情報を条件別に絞り込む機能が必要かもしれません。案内のタイミングを逃すなら、一定の条件で自動配信する仕組みが候補になります。
誰が情報を登録し、誰が確認するかも合わせて考えます。必要な情報が入力されなければ、便利な検索や自動化の機能があっても十分に活用できません。
こうして、自社の業務に必要な条件を整理することが「要件定義」です。最初から専門的な仕様書を作る必要はありません。まずは、現状の作業と、改善したい状態を具体的に説明できるようにすることが重要です。
機能の有無に加えて、現場で使い続けられるかを確かめる
実際に使う担当者が、普段の業務に沿って試す
必要な機能がそろっていても、実際の作業に当てはめると使いにくい場合があります。デモや試用の機会があれば、日常的に使う予定の担当者が、自社の業務に沿って操作を確かめるとよいでしょう。
進捗共有のツールなら、案件の登録だけでなく、状況の更新、他の担当者による確認、引き継ぎまでを一通り試します。入力した情報を、受け取る側が見つけられるかも確認します。
このとき、操作に詳しい人だけで評価を終えないことも大切です。実際の利用者がどこで迷い、どの作業に時間がかかるかを見ることで、導入後に必要な準備もわかります。
初回の操作で戸惑ったことだけを理由に、候補から外す必要はありません。説明を受ければ進められるのか、何度使っても業務上の負担が残りそうなのかを見分けることが重要です。
使う範囲と、困ったときに聞ける先を決めておく
多機能なツールでも、すべての機能を一度に使い始める必要はありません。導入目的に照らして、最初に使う業務と対象者を決めます。
あわせて、従来の方法から何を切り替えるかを整理します。「新しいツールにも入力する」という追加作業だけになれば、現場の負担は増えてしまいます。移行中に併用する場合も、どちらの情報を正式なものとして扱うかを明確にしておきたいところです。
操作案内は、自社でよく行う作業に絞って用意すると、実務で参照しやすくなります。質問を受ける窓口や、提供元のサポートへ問い合わせる担当も決めておきます。
社内の詳しい人の善意だけに頼らず、習得と問い合わせ対応を運用の一部として準備することが、定着を支える土台になります。
既存ツールとの連携と運用費用まで含めて選ぶ
単体では便利でも、転記や二重管理が残らないかを確認する
業務ツールを選ぶ際は、現在利用しているシステムとの関係も確認します。
たとえば、ECサイトの購入情報をメール配信に使いたくても、その情報を取り込めなければ、手作業でデータを移す必要があります。転記や加工に時間がかかるほか、更新漏れや入力ミスの原因にもなります。
連携によって必要な情報を利用できれば、こうした手間を減らせる可能性があります。ただし、「連携対応」と書かれているだけで、自社が必要とする使い方までできるとは限りません。
どの情報を渡せるのか、どちらからどちらへ連携するのか、いつ更新されるのかを確認する必要があります。初回の取り込みだけなのか、変更後も情報が更新されるのかによっても、運用は変わります。
また、Shopifyアプリのように、別のサービスを組み込む形で機能を補う選択肢もあります。単体のツールの機能一覧だけで判断せず、既存サービスと組み合わせたときに、自社の仕事がどう流れるかまで考えることが大切です。
月額料金に加えて、設定・連携・社内運用の負担を見積もる
予算を検討する際は、月額料金だけでなく、導入と運用にかかる費用や作業も含めます。
初期設定、既存データの移行、外部サービスとの連携などに、別途費用がかかる場合があります。利用人数やデータ量が増えたときに、料金がどう変わるかも確認が必要です。
社内では、操作を覚える時間、マニュアルの準備、問い合わせ対応、日々の管理などが発生します。これらを誰が担当し、通常業務と両立できるかも検討します。
料金が安くても、毎回の転記や修正に多くの時間がかかるなら、運用全体の負担は小さくありません。一方、機能が豊富でも、自社で使う見込みがなければ、その分の費用が導入目的に見合うかを考える必要があります。
契約できる金額かどうかに加え、改善したい業務に対して、継続的に運用できる費用と体制かを確認しましょう。
自社の現場とツールの知識を持ち寄り、導入方法を考えよう
現場の困りごとは共有し、機能やサービスへの落とし込みは相談する
ここまでの検討を、すべて社内だけで進めるのは難しい場合もあります。自社の業務には詳しくても、どのような機能を持つSaaSがあるのか、どの組み合わせが適しているのかまで把握しているとは限らないからです。
一方、外部の導入支援企業も、相談を受けた時点では、社内の作業や担当者ごとの事情まではわかりません。ツールの選定から運用までを、現場の情報を共有せずに任せきることは難しいでしょう。
そこで必要になるのが、それぞれの知識を持ち寄る進め方です。
自社からは、現在の作業、困っていること、改善したい状態を伝えます。支援側は、それを実現するための機能やサービス、連携方法などを検討します。話し合う中で、課題の捉え方や運用方法を具体化していきます。
相談する前に、必要機能や候補サービスを決め切る必要はありません。どこで困っているかを説明し、技術やサービスに関する判断が難しい部分を相談することが、選定を進める一つの方法です。
クラレボでは、複数のSaaSの連携も含めて導入を相談できる
クラレボでは、業務課題に応じたSaaSの導入について、複数サービスの連携も含めて相談できます。
必要な機能を備えるツールを探すだけでなく、現在利用しているサービスを生かせるか、別のSaaSを組み合わせる方法があるかも含めて、導入方法を考えます。
「このツールを契約したい」という段階だけでなく、「この作業を改善したいが、何を選べばよいかわからない」という段階でもご相談ください。現場の状況を伺いながら、必要な機能や運用上の条件を整理していきます。
業務ツールの選定は、導入後の仕事の流れまで考えよう
業務ツールを活用するには、操作を覚えることに加え、自社の課題に合う機能と、現場で使い続けられる運用が必要です。
まずは、導入を検討するきっかけとなった困りごとを具体化し、改善後の仕事の流れを整理します。そのうえで、実際の担当者による試用、問い合わせ対応、既存ツールとの連携、運用費用を確認することが大切です。
「使いこなせるだろうか」という懸念を、操作、業務への適合、社内運用、連携などに分けてみると、導入前に確かめるべきことが見えてきます。
自社の現場でわかることを整理し、機能やサービスの選択で判断が難しい部分は外部の知見も取り入れる。クラレボでは、その検討段階から、業務に合った導入方法を一緒に考えていきます。業務ツールの導入検討の際は、ぜひクラレボにご相談下さい。


